神奈川地域資料保全ネットワーク

神奈川地域資料保全ネットワーク(神奈川資料ネット)のブログです。ご案内等を掲載していきます。

8/4開催のシンポの参加記を書いていただきました。

8月4日に開催した、「大災害から地域資料を救い出す〜関東の資料保全ネットワークのとりくみ〜」の参加記を、
伊勢原市教育委員会の井上淳さまが書いてくださりました。

お忙しい中、参加記を書いてくださり、また、本ブログへの掲載をご許可いただきました井上さまに
心より御礼申し上げます。
問題点を絞って、とてもわかりやすく書いてくださいました参加記、とてもありがたく思っております。
できることを日々の中で精一杯行ない、緊急時に可能な協力・連携ができる組織となるようにしていきたいと思っております。

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「大災害から地域資料を救い出す〜関東の資料保全ネットワークのとりくみ〜」
  に参加して自治体職員としての感想

 「個人情報保護を盾に行政は資料所在者の情報を拒んでいる。」
これまで何度か同じ事を聞かされてきたが、今回もまたこの話になった。災害時に資料の状況を把握することは急務であるが、避難所への参集を義務づけられている市町村職員は当然ながらこの業務は行えない。自分たちの代わりに資料・文化財の状況確認をして頂けるボランティアの方々が居られるとしたら願ってもないことであるが、そこには個人情報の壁がある。役所から自分に関する情報を流されるのを不安に思う資料所蔵者の方も居られるだろう。確かに個人情報保護はボランティア活動の足かせになっているのかもしれない。
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「行政は変わらなければいけないのに、変わろうとしない」という御意見があった。しかし私に言わせれば、これは無理に変えさせられた結果なのだ。変えさせたのは「IT革命」という国策であり、国民総背番号制である。しかも国は行財政改革の名のもとに無駄が省けるとの理由で個人情報の一元化を進め、マスコミはこれを後押ししている。これにより僅かなセキュリティーのほころびから、完全に他人に成りすましてしまうことが可能となる。個人情報保護の規制はますます強くなるだろうし、災害ボランティアの活動も思うようにいかなくなる事が増えるだろう。
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 今回自治体職員の参加が少なかったようだが、法や条例で禁止されている個人情報開示を求める話になると、今後も参加はないだろう。公務員攻撃の集会に進んで参加する者はいない。だが私は少し違う点を探ってみたい。「行政はどこのど誰かわからない奴には(情報を)教えられないということなのだろう」という御意見があった。大切なのはそこのところなのだ。
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 昨年6月、私は福島県二本松市原発事故で避難をしている浪江町役場の仮説住宅入居事務のお手伝いをさせて頂いた。この時役場の職員の方が最も注意をしていたのは個人情報を使った詐欺だった。私と同じく支援に行った人で住民の方に事務連絡があって電話をし自分の名前を言ったところ、「役場にそんな名前の職員はいない。誰だお前は」と不審者と間違われたケースがあった。被災者は将来への不安から、誰を何を信用すればいいのか分からなくなっている。それは自治体もまた同じある。そういう時にこそ信頼できる関係というものを築いて行きたいと願っている。

                     井上 淳(伊勢原市教育委員会

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