神奈川地域資料保全ネットワーク

神奈川地域資料保全ネットワーク(神奈川資料ネット)のブログです。ご案内等を掲載していきます。

寒川でのワークショップの参加記を書いていただきました!

2013年9月8日に寒川町民センターにて、寒川文書館との共催で開催いたしました資料保存ワークショップ「水損資料等の応急措置を学ぶ」は、
多くの皆さまにご参加いただき、無事終了いたしました。ありがとうございました。
講師の田上先生・山口先生にも御礼申し上げます。

当日ご参加いただきましたお二方に参加記を書いていただきましたので掲載いたします。
お一方は寒川町観光協会のボランティア養成講座を受講中の森和彦さん、
そしてもうお一方は、熊本県の天草アーカイブズにお勤めの松野恭子さんです。

*ご自身のブログに記事を書いてくださった方もおられます。ぜひご覧ください。
「後世に残るように」
http://nakazenoie.exblog.jp/18540318/
ありがとうございました。

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「水損資料等の応急処置を学ぶ講座を受講して」

                        森 和彦

水損資料等の応急処置とは、どうゆう事をやるのか興味があり、受講しました。
水損資料との言葉から、頭に浮かんだのは、2011年3月11日の東日本大震災時に起きた
津波でした。建物はもちろん、重要な資料等が流されたり、塩水をかぶったりしていました。
また、ゲリラ豪雨といわれる大雨が、日本各地で起き始めて、家が流されたり、浸水したり、
土砂崩れが起きたりして、貴重な物や思いでの物が流されたり、泥水に浸かったりしています。
 自分の住んでいる所が、いつ同様な災害に見舞われるか分からないのが現実です。
 応急処置の知識を知ってているのと知らないのとは、大きな違いが有ると思いました。
 今回は(1)襖の下貼りの取り扱い (2)水損資料の取り扱い についての体験学習でした。
(1)襖の下貼りの取り扱いでは、町内の方から古くなった襖を提供していただき、その襖を上の
方から一枚一枚はがしていく実習でした。
  記録を取って行く為に写真を撮り、イ.浸透剤 ロ.のり剥がし剤をふりかけ、ピンセットを
使って一枚一枚剥がしていく。剥がし終わった物は水洗いし(不織布の上に置き軽く洗う)
水気の取れる布の上に置き番号付け、乾燥したら、リストを作って、それぞれ封筒に入れる。
と言うのが一連の作業。
 襖を剥がしていくと、今回は提供者の方の叔母さんの習字の手習いをした紙や帳簿?の紙
が下貼りとして出てきました。
 襖も古ければ、歴史的にも貴重な物が出てくる事が分かりました。
 一枚一枚剥がすのは細心の注意と大胆さと根気がいる事が理解出来ました。
(2)水損資料の対応は、イ.泥水がかかった本を乾かすロ.泥水がかかった資料を水洗いし乾かす。
 イ.本を乾かす実習では、選らんだ本が再製紙を使用した物らしく、各ページがぺったりくっつい
ていて、剥がそうとすると、破けてしまうので、ピンセットを使用して悪戦苦闘し剥がし吸い取り紙
を挟んだ。
ロ.泥水がかかった資料は、プレートの上に不織布の上にのせ、その上に資料を置き柔らかい
刷毛で軽く泥を流し、プレートを外して、反対側にも不織布をのせ、吸水紙に挟み重石をする。
水気が取れるまで吸水紙を取り換えて繰り返す。
 以上が今回の体験実習でした。
 短い時間でしたが、水損資料の応急処置はこうしてやるのだと言う事が少しは理解できたと思
います。
 物の状態、人手、スペース、設備、時間、金銭 等から、その時のベストと思われる事を判断
し早く対応する事が大切だと感じました。
 最後になりましたが、御指導頂いた講師の田上先生、山口先生を始め、神奈川県歴史資料
保全ネットワーク、神奈川大学の皆様有難うございました。

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「資料保存ワークショップ 水損資料等の応急措置を学ぶ」を受講して

                        天草市立天草アーカイブズ  松野 恭子

 このワークショップでは水損資料の応急措置、襖の下張り文書剥ぎを体験した。水損資料の応急措置に関しては、水損した資料数がそう多くないときを想定したもので、参加者が「もし自分の家の大事な資料が濡れてしまったら」という立場になったときに行動に起こしやすい身近な内容であると感じた。それでも、乾燥作業の地道さやどういう材料を使用や手順で行うのかは実際に経験しないとわからないことである。特に、資料についた泥などの洗浄は資料を一度乾燥させてから改めて行った方が良いということ、つまり乾燥した紙資料をまた故意に湿らせて次の作業を行っても良いという点が非常に興味深かった。また、受講の様子を見て、参加者の方々の意識が高いことが強く印象に残った。今回のことが、自分の身になったときにというだけではなく、他所で水損文書の大規模な救助作業が必要な所のボランティアに参加するきっかけにつながるのではないかと感じた。
 襖の下張り文書剥ぎは、私は自分の業務で経験したことがあるのだが、今回の手法は自分がやったことがあるものと異なる点もあり非常に勉強になった。糊を分解する薬剤を使うことで下張り文書が剥ぎやすくなるとのことだったが、薬剤噴霧後の文書の表面が本当にするりとしており剥ぎやすかった。以前に他で、糊を分解するのではと大根の汁を下張り文書につけてみるという試みを見たことがあるのだがそれはほとんど効かず、純粋な成分ならこんなに効果があるのかと驚いた。下張り文書剥ぎは普段の生活ではなかなか経験することがないが、このようなワークショップに参加し、襖の下に文書があるということの認知度が上がればそれが史料保存につながると思う。
どちらの内容も非常に有意義な体験で、参加できて良かったと思う。

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